新曲『名前も知らないキミ』を公開しました
このたび、大鵬タクシーのオリジナル楽曲『名前も知らないキミ』をYouTubeで公開しました。
▶ YouTubeはこちら
https://youtu.be/XD9Pv52HKQE
この曲は、福岡の街をタクシーで走る中で出会った「名前も知らない誰か」との記憶をもとに制作した作品です。
タクシーの仕事は、人の人生の途中にお邪魔する仕事
タクシーの仕事を始める前は、「お客様を目的地まで安全にお送りする仕事」というイメージしかありませんでした。
もちろん、それは間違っていません。
でも実際に乗務を始めてみると、それだけでは言い表せない仕事だと気づきました。
タクシーの車内には、その人の人生の“途中”が流れ込んできます。
出張へ向かう人。
病院へ向かう人。
恋人に会いに行く人。
大切な人との別れから帰る人。
就職が決まったことを嬉しそうに話す人。
仕事で大きな失敗をして、黙ったまま窓の外を見つめる人。
酔っぱらって陽気な人もいれば、疲れ切って一言も話さない人もいます。
私たちは、そのほんの数分、あるいは数十分だけ、その人の人生に同乗させてもらっているのだと思います。
名前を知らないまま終わる関係
乗務をしていると、何度も顔を合わせるお客様がいます。
「こんばんは。」
「久しぶり。」
「今日はどうやったと?」
そんな何気ない会話を交わすうちに、少しずつ距離が近づいていくことがあります。
でも、不思議なことに、名前を知らないままのことも少なくありません。
こちらも聞かない。
向こうも名乗らない。
だけど、お互いに顔を見れば分かる。
そんな関係。
一般的に考えれば、とても曖昧な関係かもしれません。
けれど、その曖昧さの中にしかない優しさがあります。
名前を知らなくても、「今日は元気そうだな」と安心したり、「最近見かけないな」と少し気になったりする。
その感覚は、タクシーという仕事ならではのものなのかもしれません。
福岡の街の名前には、思い出が染み込んでいる
この曲には、実際の福岡の地名がたくさん登場します。
店屋町。
綱場町。
奈良屋町。
対馬小路。
呉服町。
石城町。
古門戸町。
照葉。
百道。
香椎浜。
観光雑誌の表紙を飾るような場所ばかりではありません。
むしろ、地元の人や、毎日走っている乗務員だからこそ馴染みのある名前かもしれません。
でも、だからこそ思い出があります。
「ここで道を間違えて怒られたな。」
「この交差点で初めて一人でお客様を乗せたな。」
「あのお客様をお送りしたのは、この道だった。」
街は同じように見えても、自分の中では全部違う景色です。
タクシー乗務員にとって、地図は単なる道路ではなく、記憶そのものなのだと思います。
最後の会話は、最後だと分からない
この曲の中心にあるのは、「別れ」です。
ただし、ドラマのような大げさな別れではありません。
ほとんどの別れは、驚くほど普通です。
「じゃあ、また。」
「ありがとう。」
「おつかれさま。」
そう言って降りていった人が、もう二度と乗ってこない。
それだけです。
人は、いつも「また会える」と思っています。
だから最後の会話を特別にはしません。
けれど、振り返ってみると、それが最後だったことに気づく。
「最後なら、もう少しちゃんと話せばよかった。」
「ありがとうって言えばよかった。」
そんな後悔は、誰にでもあるのではないでしょうか。
この曲では、そのどうしようもない現実を描きたかったのです。
『名前も知らないキミ』は恋愛の歌ではありません
もちろん、恋愛の歌として聴いていただいても構いません。
友情の歌として受け取っていただいても嬉しいです。
でも、私の中ではもっと広い意味があります。
学生時代の友人。
昔お世話になった上司。
毎朝挨拶していた近所の人。
よく行くコンビニの店員さん。
そして、タクシーで出会ったお客様。
人は、名前も知らない誰かに支えられながら生きているのではないでしょうか。
誰かの何気ない一言で救われることがあります。
たった数分の出会いが、何年経っても心に残ることがあります。
この曲は、そんな「一期一会」の歌です。
AIと人間で作ったからこそ生まれた作品
今回の制作では、AIツールの力も借りました。
歌詞の整理や構成の相談。
楽曲制作のサポート。
映像演出のアイデア。
これまで一人では形にできなかったものを、AIという新しい道具と一緒に作り上げました。
とはいえ、AIが勝手に作った作品ではありません。
実際に福岡の街を走った記憶。
お客様との会話。
悔しかった日。
嬉しかった日。
「向いていないのかもしれない」と悩んだ夜。
そして、「今日はどうやったと?」という何気ない言葉に救われた経験。
その部分だけは、誰にも代わることのできない、自分自身の人生です。
AIは道具です。
でも、そこに込める感情や記憶は人間にしか持てない。
この作品は、その両方があったからこそ生まれたものだと思っています。
だから今日も、この街を走っています
呉服町の朝焼け。
雨上がりの店屋町。
照葉に差し込む朝の光。
今日も福岡のどこかで、新しい出会いが始まっています。
そして、どこかで静かに終わっていきます。
それでも人は、誰かと出会うために前へ進む。
タクシーは、そんな人と人との間をつなぐ仕事です。
名前も知らない誰かとの数分間。
その時間を、これからも大切にしていきたいと思います。
だから今日も、大鵬で走っています。
『名前も知らないキミ』
▶ YouTube
https://youtu.be/XD9Pv52HKQE
作詞・作曲:せんむ(Human × AIナビ搭載)
もしこの曲を聴いて、「そういえば、あの人どうしているかな」と思い浮かぶ誰かがいたなら。
あるいは、今も会っているけれど、当たり前すぎて感謝を伝えられていない誰かの顔が浮かんだなら。
ぜひ、その人を少しだけ大切にしてみてください。
最後の会話は、最後だと分からないから。
だからこそ、今日という一日を。
そして、今、目の前にいる誰かとの時間を。
大事にしていけたらと思います。